トム物語① ●
トム物語② ●
トム物語③ ●
2008年12月23日。実家からの早朝の電話にKは起こされた。
「今日空いてる?トムの調子が悪くて、もしかすると元気なうちに会えるの最後になっちゃうかもしれないから。」
飛び起きて急いで車に乗り込むKは、11月頃から体調を崩しているのを思い出しつつ、心構えをしていたもののいよいよかと動揺を隠せなかった。
実家に辿り着くと、たまたま父と散歩に出ていたトムに遭遇した。
おじいちゃんになったトムは、既に足取り重く、そして今まで見たことのないほどほっそり頬がこけていた。正直、その場で涙が溢れそうだった。
「トム!」
肉が落ちて皮ばかりあまってしまい、妙に骨がゴツゴツしだしてはいたが、やっぱりトムは何よりも可愛く大切な家族。
たった一日だったけど、ずっとトムの傍にいることができ、帰り際は「本当にこれが最後かも」と思い後ろ髪引かれながらも、お別れをしたのであった。
年始。実家に帰るKの前に、この間会ったよりも少し元気になったトムがいた。
「Kが帰ってきて、少し元気出てるみたいだよ。」
正月から誕生日まで、久しぶりにトムも含めた家族と一緒に過ごす。動きは鈍いものの食欲はまだまだ旺盛で、一時的に弱ってしまったものの、もう少しは大丈夫かなと安心したKだった。
「せめて25日までは生きててほしいねぇ。トムが我が家に来た日だから。」
これを合言葉に、家族はトムの長生きを祈った。
そして2月11日21時半。自宅の電話が鳴ったKは、嫌な予感を感じざるを得なかった。
電話口の兄。「トムがちょうど今死んじゃったから。」
実家の家族も自分も、TVで同じサッカー観戦をしていたところ。
トムはひっそりと息を引き取った。父は号泣で言葉にならない。
母の「トムちゃんね、可愛い顔してるから。」の一言。
赤ちゃんのうちに我が家に来て、いつの間にか全員の歳を追い越して、寿命の限りわんぱくで好き勝手に、そして全員の愛情を注がれながら過ごしたトムは、きっと幸せだったんだろう。自分たちも幸せをいっぱいもらった。そう思った。
「寂しいね。トムの好きだったものを棺に一緒に入れてあげてね。」
Kは込み上げる涙を抑えきれないままそう伝え、受話器を置いた。
そして一言。力を振り絞って口にした。
「ありがとう・・・」
やっぱり涙が止まらなかった。
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